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■お墓・位牌・仏壇・葬儀費用の承継
相続の場面で争いになるものとして、お墓、位牌、仏壇などがあります。
これらのものは、法律上遺産とは異なる扱いがされており、一般的な相続の対象とはなりません。
また、被相続人が亡くなってお葬式を行えば葬儀費用が発生しますが、その負担についても争いになることがあります。
そこで、これらのものの承継についてまとめてみましょう。
■1 祭祀財産
系譜(系図)、位牌、仏壇、墓地などを祭祀財産といいます。民法は、祭祀財産の承継について、原則として「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。」としており、相続の対象から除いています。これは、祭祀財産を法定相続分によって複数の相続人に分割してしまうと、祖先の祭祀を行うことができなくなってしまうためです。
戦前においては祭祀財産の承継の問題は戸主権の象徴として大きな意義を持っていましたが、家制度や家督相続を廃止した戦後の民法上は以前ほどの大きな意義はなくなったといえるでしょう。
■2 祭祀財産は誰が承継するか
祭祀財産を承継する人(祭祀承継者)は次のような方法で決められます。
(1) 被相続人の指定がある場合
被相続人が祭祀承継者を指定した場合には、指定された人が承継者となります。
この指定は遺言によって行うことができますが、指定の形式に関する定めはありませんので、遺言ではなく生前に口頭などで行うこともできます。
(2) 被相続人の指定がない場合
この場合には、その地方や被相続人の職業などの慣習によって決まります。
ただし、実際に裁判で慣習が認定された例はほとんどありません。
戦前においては、地方によって長子相続、末子相続などの慣習が存在していたようですが、現在ではこのような家制度を前提とした慣習を認めることは困難でしょう。
また、被相続人から家業を継いだ人が祭祀承継者となることも多いと思われますが、それが慣習に基づくものといえるかは明確ではありません。
(3) 被相続人の指定がなく、慣習も明らかでない場合
この場合には、家庭裁判所の調停・審判で決めることになります。
調停手続においては、相続人らの間の話し合いにより祭祀承継者を決めますが、合意に至らない場合には審判手続に移行し、家庭裁判所がこれを決定することになります。
家庭裁判所が祭祀承継者を決める基準について、裁判例は、
「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等の間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主宰の意思や能力、その他一切の事情(例えば利害関係人全員の生活状況及び意見等)を総合して判断すべきであるが、祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく、死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち、他方、被相続人からみれば、同人が生存していたのであれば、おそらく指定したであろう者をその承継者と定めるのが相当である」
としています(東京高裁平成18年4月19日決定)。
なお、姓が同じ者でなければならないなどの制限はありませんので、結婚により姓を変更した人が祭祀承継者となることもできます。
(4) 遺骸や遺骨の帰属
民法上、遺骸や遺骨が祭祀財産となるのかは明らかではありません。
ただし、最高裁の判決には遺骨が慣習に従って祭祀承継者に帰属することを認めたものがあり(最高裁平成元年7月18日判決)、遺骸や遺骨は祭祀承継者に帰属するものといってよいでしょう。
(5) 相続人でない者が祭祀承継者になることができるか
先ほど述べたとおり、祭祀承継は相続ではありません。したがって、相続人ではない者が祭祀承継者となる余地もあります。
例えば、民法上法定相続人ではない内縁の夫や妻が祭祀承継者となることもできます。
ただし、祭祀承継は祖先の祭祀を目的で相続と別に扱うこととされているものですから、全くの他人が祭祀承継者となることが許されるかは疑問もあります。
■2 葬儀費用
被相続人の葬儀にかかった費用(葬儀費用)は喪主が負担すべきものなのでしょうか、それとも相続人らが負担すべきものなのでしょうか。
葬儀費用は、葬祭業者と喪主との間の葬儀に関する契約に基づいて発生する債務です。したがって、葬儀費用の負担者は原則として「喪主」になります。
ただし、喪主は契約上の形式的な葬儀の主催者に過ぎず、実質的な主催者は相続人全員であるような場合には、相続人全員が分割して負担すべきことになる(つまり、喪主は他の相続人に負担した葬儀費用を求償できることになる)でしょう。
いずれにしても、葬儀費用は被相続人の死後に発生するものですから、相続の対象となるものではありません。
なお、葬儀費用と関連して、香典が誰に帰属するかという問題もあります。
一般的には、香典は、葬儀の参列者から喪主に対する贈与であると考えられますので、「喪主」に帰属するものといえます。したがって、香典を葬儀費用に充てても余りが出たような場合には、その余りをどう処分するかは喪主の判断に委ねられることになるでしょう。
■まとめ:祭祀継承は相続とは別問題となる
以上のように、祭祀承継問題や葬儀費用の問題はやや複雑で、過去の判例に当てはめて考えるなどの必要があります。また被相続人が亡くなった直後の混乱している中での対応になるため、ここで承継者や負担者を間違うことで後々相続トラブルに発展することもあります。
ですから、相続が発生し、トラブルが予見できる場合はできるだけ早めに弁護士にご相談ください。
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