目次
■相続における遺産分割とは?
遺産分割は被相続人(亡くなられて遺産を渡す方)の遺産を、相続人(遺産を受け取る方)が相続する際の遺産の分割手続きをすることを言います。
この遺産分割の手続きは大きく4つの種類に分かれます。それが遺言書による分割、協議による分割、調停による分割、そして審判による分割です。
これらは遺産分割の手続きで、分割が上手くいかないときに順番に取られます。そこで遺産分割の流れと一緒に、遺産分割手続きの特徴についてみていきます。
■相続人調査
遺産を相続できる相続人を調査します。相続人は通常、戸籍謄本等で確認することができます。ただし、相続人の範囲に異議がある場合は、人事訴訟を提起することも可能です。
家庭裁判所に人事訴訟を提起する
相続人に異議申し立てをする場合、家庭裁判所に人事訴訟を提起できます。これは養子縁組や婚姻の有効・無効を確定させるものです。これによって相続人の範囲を法的に確定することができます。
■遺言書の存否を確認
被相続人が残した遺言書の存否を確認します。遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。なお、公正証書遺言以外は開封してはいけません。
遺言書があった場合
遺言書があった場合は、遺言書の内容に従い遺産を分割します。全ての遺産の相続先が決まっていれば、遺産分割の問題は起きません。
なお、次の場合には遺産分割協議が必要です。
- ①遺言書に不備があり無効とされる場合
- ②遺言内容と異なる遺産がある場合
- ③地方裁判所によって遺言が無効とされる場合
また、遺言書の内容に不服があり、異議申し立てする場合には、地方裁判所にて民事訴訟を提起しなければなりません。これにより遺言の有効・無効を確定できます。
遺言書がなかった場合
遺言書がなかった場合は、遺産分割協議を行います。また、遺言が無効とされる場合、遺言内容と異なる場合も遺産分割協議を行います。
■遺産分割協議
遺産分割協議を行う上では、相続人全員が参加して話し合う必要があります。そして相続人全員の合意をもって「遺産分割協議書」を作成することを目的としています。そのため、仮に全員が参加をしていない場合、その協議は無効とされます。
相続分を確定する
相続人が相続する遺産を、民法の法定相続分に基づき確定します。相続人の数や被相続人との関係などによって、法定相続分は異なります。
※参考:法定相続分とは
また、相続人全員が合意した場合は、法定相続分に基づかなくても相続分を決定できます。
遺産の範囲を確定する
被相続人の遺産と思われる資産・負債が、本当に遺産に含まれるのかを確定します。預貯金や生命保険金、死亡退職金、借金などをどうするか決定します。
・地方裁判所に遺産確定訴訟を提起する
遺産の範囲が確定できない場合は、地方裁判所に民事訴訟を提起して遺産確定を行います。これにより、遺産の範囲を法的に確定することができます。
遺産を評価する
遺産として認められた資産・負債を金銭評価します。現金や生命保険金などは、額面通りに評価をして問題ありません。しかし、不動産や株式などは個別に資産評価が必要です。
鑑定などにより評価をする
不動産や株式などの資産価値を評価する場合、不動産鑑定士、税理士などの専門家に鑑定を依頼します。この資産価値の評価方法は相続税法等で定められているため、この評価方法に従って試算されます。
特別受益者と特別受益の額を確定する
相続開始時に、被相続人より特別受益を受けていた人を確定します。特別受益には、遺贈や生前贈与が含まれます。こうした特別受益者は、他の相続人に比べて多くを相続していることになります。そのため、遺産分割の際には、特別受益の持戻しをして手続きをします。
※参考:特別受益とは
なお、特別受益の確定は法廷ではできないとされています。これは特別受益の決定のみで、遺産分割が進むわけではないからです。
寄与相続人と寄与度を確定する
被相続人に対して特別な貢献をした人には、それを寄与度として確定させます。特別な貢献には、例えば事業従事、療養看護、扶養などがあります。この寄与度が多い人ほど法定相続分に上乗せして、遺産を取得することができます。
なお、この寄与度は相続人全員での話し合いによって決めることが原則です。そのため、基本的には法廷では確定できません。
※参考:【遺産相続】でトラブルとなるケース:特別受益vs寄与分
取得分額の算出と遺産分割方法を決定する
法定相続分に特別受益と寄与度を加えて修正をします。この修正分によって、相続人1人ずつの具体的な取得分額を確定します。
この取得分額に従って、具体的に遺産の分割をしていきます。この分割方法には現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つがあります。分割方法は、相続人全員の話し合いにより決定されることが一般的です。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割の協議により、相続人全員が合意をした場合は遺産分割協議書を作成します。これは全ての相続人が協議内容に合意したことを証明するための書類です。そのため、遺産分割協議はこの書類の作成をもって終了となります。
■遺産分割の調停
相続人全員により遺産分割協議が成立をしない場合、相続分割調停の手続きを取る必要があります。これは家庭裁判所にて行われる手続きで、基本的には調停委員を交えた相続人全員の話し合いにより遺産分割が行われます。そして、最終的に調停調書作成を目指します。
遺産分割調停を申し立てる
調停にて遺産分割の手続きをする場合、家庭裁判所に申立てをします。申立ての方法は、「遺産分割調停申立書」を作成し、家庭裁判所に提出します。家庭裁判所は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、もしくは相続人の合意できる家庭裁判所です。これによって調停の申立てとなります。
調停にて事情聴取をする
調停の期日に申立て当事者や、その他関係者は家庭裁判所に出頭します。出頭した当事者や関係者に対して、調停委員は事情聴取をします。この事情聴取では、お互いの主張や、争点がどこにあるのかを確認します。
調停で話し合いをする
調停委員を交えて、当事者と関係者で遺産分割の協議が行われます。協議する内容は、遺産分割協議で話した内容と同様のものです。
そのため、以下のような内容を決定します。
- ①相続人の範囲を確定する
- ②遺言書の存否を確定する
- ③遺産の範囲を確定する
- ④遺産の評価を確定する
- ⑤特別受益・寄与分を確定する
- ⑥分割方法を確定する
これらの内容を段階的に確定させていきます。そして、意見がまとまらなければ、複数回の調停を行うこともあります。
調停調書を作成してもらう
遺産分割調停により相続人全員が合意をしたら、調停調書を家庭裁判所に作成してもらいます。調停調書は裁判所が作成するため、法的効力を持つことになります。そのため、書類の内容は強制力を持つことになります。そして、この調停調書の作成をもって遺産分割調停が終了となります。
■遺産分割の審判
調停委員会による遺産分割調停が不成立に終わると、遺産分割審判の手続きを行う必要があります。この審判も家庭裁判所にて行う手続きで、家事審判官の審理によって決定されます。そして、最終的に審判成立を目指して手続きが行われます。
遺産分割審判を申し立てる
遺産分割調停が不成立となると、審判の申立てがあったと判断され、審判手続きに移行されます。この場合は調停手続きを行っていた家庭裁判所にて、審判手続きを行うことになります。
また、遺産分割調停に申立てる前に、先に審判に申し立てることも可能です。こちらの場合は「遺産分割審判申立書」を作成して、相手方もしくは相続人が合意した家庭裁判所に提出します。ただし、先に審判を申し立てると、一般的には調停に付されることになります。
これらいずれかの方法により、遺産分割審判の申立てとなります。
家事審判官により審理手続きが取られる
家事審判官は、当事者や関係者から遺産分割に関する資料や証拠を調べます。また、必要とあれば当事者や関係者に事情聴取を行うこともあります。こうした審理手続きを取り、最終的に家庭裁判所の裁量により相続分や分割方法が決定されます。
遺産分割審判の確定
家事審判官により決定された審判内容に異議がない場合、この内容をもって遺産分割審判は終了となります。このように容認する場合は、決定した内容通りに強制執行がされます。
一方、不服がある場合は、高等裁判所にて即時抗告することが可能です。ただし、審判の告知を受けてから2週間以内に手続きをする必要があります。
■遺産分割のまとめ
遺産分割の流れについて見てきました。これを見ると1つの手続きを済ませるためにも、相続人同士で争いを起こしてしまう可能性があることが分かります。こうしたトラブルは専門家に依頼しておけば早期に解決できる場合が多いのです。そのため、遺産分割をスムーズに終えるためにも、最初から弁護士に依頼しておくといいでしょう。遺産分割の助言を出来る専門家は他にもいますが、トラブルとなると、やはり弁護士に解決力が一番あると言えるでしょう。
当エクレシア法律事務所は、埼玉県越谷市にある遺産相続に強い弁護士事務所です。遺産相続における遺産分割をはじめ、様々なトラブル解決に実績があります。埼玉県越谷市周辺の春日部市や草加市、吉川市、川口市、三郷市、八潮市、東京都足立区を含め、周辺のエリアも対応が可能です。上記に見てきたように複雑で手続きがたくさん必要な遺産相続トラブルがございましたら、無料相談もございますので、まずはお電話かメールにてお問合せください。
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