行方不明の相続人を失踪宣告により死亡したことにして、残りの相続人間で遺産分割協議を行った事例
Aさん 兄と弟がいる
今回Aさんの母親が亡くなり、兄弟間で遺産分割をしなければならなかったのですが、父親が戸籍上は存命しているものの、少なくとも12年以上前から行方不明であるため、自宅などの遺産分割をすることが出来きず、困って相談に来られました。
お話を聞くと、母親が、12年位前に地元警察に捜索願いを出していることが分かりました。そうすると、捜索願いを出した時から「7年以上」経過していたので、父親の失踪宣告の申立を家庭裁判所に行い失踪宣告が認められました。その結果、母親の相続人は、Aさんとその兄弟だけになったので、無事遺産分割をすることが出来ました。
Aさんの母親が死亡したことによる相続人は、Aさんとその兄弟及び行方不明の父親になります。Aさんのケースのように相続人の中に行方不明者がいる場合、その行方不明者も戸籍上は共同相続人の一人に他ならないので、このままでは遺産分割協議ができません(遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないからです。)。
Aさんの場合、対応策として、「失踪宣告」の手段をとることにしました。というのは、行方不明になってから7年以上経過している場合には、家庭裁判所で失踪宣告を受けることで、法律上、その7年が経過した時に亡くなった扱いになります。そうすると、行方不明者である父は今回亡くなった母よりも先に亡くなったことになるので、被相続人の相続人ではなくなり、残りの相続人だけで遺産分割協議をすることができるのです。
相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割の方法としては、失踪宣告の方法以外にも、行方不明の相続人のために「不在者財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらい、遺産分割協議をする方法もあります。この場合、不在者財産管理人に報酬を支払う必要が生じ、また、法定相続分相当分の財産を行方不明者に残さなければなりません。
より詳しくは、
を参照してください。