親に対する介護によって、支出を免れた介護費用分が寄与分として認められた事例
Aさん 主婦
Aさんは、同居していた母親が認知症を患ってしまいましたが、適当な介護施設がありませんでした。そこでAさんは、そのまま自宅で昼夜を問わず、食事、風呂、排便の介助をしながら、ほぼ24時間体制で母親を介護しておりました。その後母親が亡くなり、Aさんの父親はすでに他界していましたが、兄弟がいたため、遺産分割協議をすることになりました。Aさんからすれば自分が母親の介護をほとんどしたのに、兄弟間で親の財産を平等に分けることには納得がいかず、自分の貢献度を遺産分割に反映できないものかと弁護士に相談に来ました。
Aさんの母親に対する介助行為は、実質的には訪問介護を受けていたのと同等でした。そこでAさんの介助により母親は訪問介護の費用の負担を免れたわけで、仮に訪問介護を依頼すればかかったはずの介護費用を寄与分として認められるべきである主張していく方針を立てました。この方針のもとAさんの兄弟を説得したところ、Aさんの介助行為にある程度見合った金額を寄与分とすることに合意してもらうことが出来ました。
親が亡くなった場合の、子供間の法定相続分は均等ですので、子供間(兄弟間)で同じ割合で分割するのが原則です。しかし、子供の内1人の親(被相続人)への貢献(労務の提供や療養看護)により、親(被相続人)の財産が増えた場合や財産の減少を防いだ場合等に、子供の内の1人(貢献した人)の具体的相続分が他の子供よりも多くなることがあります。これを寄与分といいます。そして、子供の内の1人が親の介助・介護をした場合、その介助・介護に見合う金額について寄与分が認められることがあります。ただし、寄与分が認められるのは、その介助・介護が子供として求められる扶養義務の範囲を超えていると評価された場合(特別な寄与)に限られますので、単に同居して送迎をしていた、食事を作ってあげていた程度では、寄与分は認められにくいと思われます。
寄与分についての詳しい解説は、【遺産相続】でトラブルとなるケース:特別受益vs寄与分 を参照。☜