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遺留分放棄とは?遺産相続で勘違いしやすい遺留分放棄(まとめ)

民法、六法全書、遺留分放棄のイメージ

 

1 遺留分とは?

相続人が相続できる最低限の割合を遺留分と言います。

被相続人が全財産を相続人のうちの1人に相続させるとの遺言を遺した場合、他の相続人が何も相続できないことになると、その相続人らが被相続人からの相続に対して持っていた期待を侵害することになります。したがって、民法は遺言によっても侵害できない最低限度の取り分を遺留分として法定相続人(ただし、兄弟姉妹は除く)に認めているのです。

 

しかし、被相続人やその推定相続人(相続人となることが予定されている人)らの意向により、特定の推定相続人に全ての遺産を相続させたいという場合も出てきます(家産や家業を維持するためにその細分化を防ぎたい場合、相続人間での相続に関する争いを避けたい場合など)。

そのような場合、推定相続人らが遺留分を主張できなくすることができれば(つまり、あらかじめ遺留分を放棄することができれば)、意向どおりの遺産の継承ができることになります。

 

2 遺留分放棄は可能?

では、相続が開始する前(被相続人が亡くなる前)に遺留分を放棄することができるのでしょうか。

 

遺留分は相続人の保護のための制度であり、遺留分に関する権利(遺留分減殺請求権)を行使するかどうかは相続人の自由です。そのことからすると、遺留分を放棄することも自由に認められそうですが、これを制限なく認めると、被相続人や他の推定相続人からの強要や圧力により特定の人が無理やり遺留分を放棄させられることにつながりかねません。

 

そこで民法は、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の審判による許可を得る必要があることとして、その濫用を防いでいます。したがって、推定相続人が被相続人や他の推定相続人に、遺留分を放棄する旨の書面などを交付していたとしても、裁判所の許可がない以上は放棄の効果は生じません

 

3 遺留分放棄の手続き

相続開始前の遺留分放棄の具体的な手続としては、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをして行うことになります。そして、裁判所は、申立てが自由意思に基づくものか、放棄の理由の合理性・必要性、放棄に対する代償の有無などを考慮して許可するかどうかを判断します。

 

4 遺留分放棄が認められない例

裁判例の中には、5年後に一定の金額の贈与を受ける契約をした上でなされた遺留分放棄の許可申立について、将来契約が履行されないおそれがあるなどとして認めなかった例や、結婚に反対していた親が結婚を許可するのと引き換えに子に遺留分を放棄させた場合にこれを認めなかった例などがあります。

 

実務上は許可されないことはさほど多くはありませんが、放棄の理由の合理性・必要性など許可の条件を満たしているかについて、念のため弁護士に相談するなどしてあらかじめよく検討した上で申立てをする必要があるでしょう。

 

なお、裁判所は、いったん許可の審判をした場合であっても、前提事情が変わり、遺留分放棄を認めることが客観的に不合理・不相当となった場合には、許可の審判を取り消すことができます

 

遺留分の放棄が許可された場合には、放棄した推定相続人は相続開始後(被相続人が亡くなった後)に遺留分減殺請求権の行使ができなくなります。そして、この推定相続人の代襲相続人(子など)も遺留分減殺請求権の行使はできません

 

5 遺留分放棄と相続放棄の違いと注意点

この相続開始前の遺留分の放棄で注意すべき点は、ここで認められる放棄はあくまで「遺留分」の放棄であり、相続放棄とは異なるということです。つまり、放棄をした人は、後の相続開始時点で遺留分減殺請求権を行使することができなくなるに過ぎず、相続に関する権利を失うわけではありません。相続が開始すれば相続人になりますし、相続人になりたくなければ別に相続放棄の手続を取る必要があります(ちなみに、相続開始前には相続放棄はできません)。

 

また、相続人のうちの一部の人が遺留分の放棄をしても、他の相続人の遺留分の割合には全く影響しません。遺留分の放棄によって、残りの相続人の取り分が増えるわけではないのです。

 

さらに、遺留分を放棄した人も相続人である以上、相続債務がある場合にはこれを法定相続分に応じて分割承継することになりますから、遺留分を放棄したからといって安心せず、相続が開始したら、さらに相続放棄をする必要がないかどうか確認すべきです。

 

遺産中に債務が含まれていない場合にはいいのですが、遺産に債務が存在している場合には、遺留分を放棄したのみで相続放棄をしていないと、財産は一切相続しないにもかかわらず、債務だけは承継してしまうという大変理不尽なことになってしまいますので、十分注意しなければなりません。相続人が被相続人の債務を全て把握しているとは限らず、相続開始後に思わぬ債務が発覚しないとも限りませんから、遺留分の放棄をした人は、相続開始後に相続放棄の手続を取っておくのが無難と言えるかもしれません

 

6 相続開始後の遺留分放棄

相続開始前の遺留分の放棄とは異なり、相続開始後に遺留分を放棄する場合には、裁判所の許可を得る必要はありません。相続人は自由に遺留分の放棄ができます。

この場合には、放棄したい人は、遺留分侵害者に対する意思表示によって放棄をすることになります。

 

7 まとめ:遺留分放棄という選択と弁護士相談

遺留分放棄について、解説してきました。

被相続人の生前に(相続開始前に)遺留分を放棄することで、遺産を予めトラブル無く配分するケースもあります。しかし、勘違いしてしまいやすい点が多く(書面だけでは効力がないこと、相続放棄とはまた別であること、無効となるケースもあることなど)、かえってトラブルを招きかねないとも言うことが出来ます。ですから、相続に強い弁護士に前もってご相談いただくのがよいかと思います。

 

埼玉県の方であれば、越谷市(南越谷・新越谷駅近く)にある当エクレシア法律事務所までご相談ください。遺留分放棄に限らず、遺産相続全般に関わる様々なご相談を受けてきました。越谷市だけでなく、周辺エリアの方、特に春日部市、川口市、草加市、吉川市、三郷市、八潮市、東京都足立区、千葉県流山市、松戸市などからもご相談をお受けしております。

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