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遺産分割において「生命保険金」は「見なし相続財産」として扱われます。見なし相続財産とは、受取人固有の財産のことです。そのため、一般の相続財産よりも遺産分割に有利な点があります。
ここでは遺産相続における生命保険金の長所を紹介していきます。遺産分割問題を起こさないためにも、生前に生命保険金を準備しておくとよいでしょう。
■見なし相続財産とは?
相続財産とは被相続人が所有する資産・負債のことを指します。一方、生命保険金等は受取人固有の財産です。したがって、生命保険金は相続財産とは見られません。
ただし、生命保険金等は相続財産としての「性質」を持つため「見なし相続財産」として扱われます。なぜなら、被相続人の死亡を原因として、相続人等が保険金を受け取れるからです。つまり、遺産分割の際には、生命保険金を「特別受益」として捉えます。
なお、見なし相続財産として見られる資産には、次のようなものがあります。
生命保険金
被相続人が生命保険に加入していると、受取人は死亡保険金を受け取れます。保険金は受け取り前までは保険会社のお金です。
そして、被相続人の死亡を機に、保険会社から受取人に保険金が支払われます。つまり、受取人の固有財産になるのです。したがって、他の相続人と話し合って相続分を決める必要がありません。
ただし、「受取人=被相続人」である場合は、相続財産として扱われます。この場合は、遺産分割の際に話し合いをする必要があります。
死亡退職金
一般的に企業に勤めていれば、退職時に労働者が「退職金」を受け取れます。ただし、退職の理由が「死亡」の場合は、「死亡退職金」という形で遺族が退職金を受取ることになります。したがって、この死亡退職金も「見なし相続財産」です。
死亡退職金に関しても、相続分を話し合いで決める必要がありません。なお、誰が受取人になっているかは企業ごとに異なるため、被相続人の勤め先に確認を取るとよいでしょう。
弔慰金
弔慰金とは企業や個人が死者を弔い、遺族を慰めるために支給するお金のことです。弔慰金も受取人の固有財産であり、基本的には相続税の対象にはなりません。ただし、支給金額が高額になる場合には「見なし相続財産」として扱われます。
なお、見なし相続財産として扱われる場合は、業務上の死亡時に「普通給与の3年分を超える金額」を受け取る場合です。また、業務外の死亡時で「普通給与の半年分を超える金額」を受け取る場合も、相続税を納める必要があります。
■遺産分割から見た「生命保険金」の優位点
生命保険金等の見なし相続財産は、一般の相続財産よりも遺産分割から見て優れている点があります。そこで遺産分割から見て、生命保険金等のメリットについて説明します。
生命保険金は現金での受け取りが可能
生命保険金や死亡退職金などは、基本的に受取人の指定口座に振り込まれます。つまり、現金での受取りが可能です。そのため、土地や住宅などの不動産に比べると相続しやすいです。なお、受取りまでの期間は、保険会社にもよりますが申請後、数日程度になっていますので、比較的早い段階でまとまった金額を受け取ることが出来るのです。
また、生命保険金であれば、契約時にあらかじめ受取人を指定できます。「確実に相続をしたい」と考える被相続人の意思を尊重できます。もし、生前、遺産分割協議で揉める可能性を危惧するなら、生命保険金を活用するのもいいでしょう。
相続放棄をしても受け取れる
生命保険金や死亡退職金は、相続放棄をした相続人でも受取りが可能です。これは生命保険金が相続財産に含まれないからです。つまり、相続放棄をしても現金の受取りができます。
一般的には「相続放棄」など考えられないかもしれません。しかし、遺産分割協議が大変だったり、被相続人が多額の負債を抱えていたりする場合には、相続放棄をした方がよいケースも多いのです。こうした場合でも生命保険金などの見なし相続財産を受取れます。
相続放棄についての詳細は、相続放棄専門サイトをご参照ください。→相続放棄専門サイト
遺産分割の代償金に利用できる
遺産分割協議について調べていると「代償分割」という言葉を目にするかもしれません。この代償分割とは、不動産等の分割できない資産を相続する場合に、その不公平を埋めるために現金を払うことを言います。
例えば、相続人がAとBの二人として、分割できない不動産が遺産相続の対象となった場合を考えます。AとBに「平等に」遺産分割をするには、不動産を分割したいところですが、それができません。そこで、相続人Aが不動産を相続し、その不動産評価額の一定金額を相続人Aから相続人Bに現金で渡すのです。これにより、不公平感を抑えて遺産分割をすることが出来ます。これが代償分割です。
ただし、これも現金がなければできません。生命保険金等で現金を受け取っていれば代償分割の「代償金」としても活用できます。
相続税の納付金に充てられる
相続税の納付は「現金」で行わなければなりません。しかし、相続財産に現金・預金があるとは限らず、相続人が相続税を納付できない可能性もあります。そこで生命保険金が役立ちます。
生命保険金なら現金で受取りが可能です。そのため、申告期限内に相続税の納付金を用意することに役立てられます。
■遺産分割から見た「生命保険金」の注意点
生命保険金などは受取人の固有財産であることは説明済みです。しかし、生命保険金を受取った相続人と、受取っていない相続人を同じように遺産分割すると、両者に不公平が生じます。そこで遺産分割上の「生命保険金」の注意点を説明します。
「特別受益」として考慮する必要がある
生命保険金等を受取った相続人と、そうでない相続人では受取る財産に不公平が生じます。もちろん、生命保険金等は受取人の固有財産であるため、相続財産に含める必要はありません。しかし、不公平を認めるわけにもいかないため、最高裁では特段の事情のある場合には「特別受益の持ち戻しの対象とする」趣旨の判決を出しています(平成16年10月29日)。
特別受益とは、特定の相続人が、他の相続人より生前贈与や遺贈を受けていることをいいます。そして、持ち戻しとは、遺産分割の際に「特別受益の金額を相続財産に組み込んで、その金額が本来の相続金額である」とすることです。したがって、生命保険金を受け取った相続人は、それに見合った分、遺産分割時には他の相続人よりも相続分が少なくなります。
■まとめ
遺産分割から見た「生命保険金」について見てきましたがいかがでしょうか。生命保険金は現金で受け取れるため、代償分割の代償金や相続税の納付金に充てやすいです。また相続放棄をした相続人でも受取りが可能です。ただし、遺産分割時には特別受益として考える必要もあるため、注意をしましょう。なお、もし生命保険金等に関する遺産分割で不明点があれば、弁護士等に相談をするといいでしょう。
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