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■跡を継ぐ子供がいないときの兄弟との相続トラブル事例
<設例>
Aさんと夫のBさんとの間には子どもがおらず、夫Bさんの両親はすでに他界しています。Bさんには2人の兄XとYがいますが、長兄のXはすでに他界し、Xには子Zがいます。
これをまとめた家系図が下記です。
これを前提に、Bさんが亡くなって相続が発生した場合に起こりうる問題について以下に見てみましょう。
■1 相続の流れ
(1) 法定相続人
そもそも、Bさんが亡くなった場合にBさんの法定相続人となるのは誰なのでしょうか。
まず、Bさんの配偶者であるAさんはもちろん法定相続人となります。
次に、被相続人(Bさん)に子どもがいない場合には、親が法定相続人となり、親もいない場合には兄弟姉妹が法定相続人となります。
設例のBさんの両親はすでに他界していますから、Aさんの他に法定相続人となるのはBさんの兄であるXとYとなります。ただ、XはBさんよりも先に亡くなっていますので、Xに代わってXの子であるZが法定相続人となります(代襲相続といいます)。
つまり、このケースでは、A、Z、Yが法定相続人であるということになります。
(2) 相続分
では、このA、Z、Yの法定相続分(相続できる割合)はどうなるのでしょうか。
配偶者と兄弟姉妹が法定相続人である場合の相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合になります。
つまり、配偶者のAさんは4分の3、ZとYはそれぞれ8分の1ずつ(4分の1×2分の1)の割合で相続することになります。
■2 このケースで相続時に起こり得るトラブル
このように、子どもがいないBさんの相続においては、妻であるAさんだけでなくBさんの兄弟も法定相続人となります。
では、このケースで起こり得るトラブルとしてはどのようなことが考えられるでしょうか。
(1) Bが自宅を所有していた場合
Bさんが自宅不動産を所有し、Aさんとともに住んでいた場合には、この自宅も遺産分割の対象となります。Aさんとしては、Bさんが亡くなった後も自宅に住み続けたいと考えることが多いと思いますが、他に相続人がいることでAさんが自宅を相続することに支障が出ることがあり得ます。
先ほど説明したとおり、Z、Yは8分の1ずつの割合の相続分を持っています。Bさんが残した遺産が自宅以外にも十分にある場合(例えば預金など)には、自宅をAさんが相続し、ZとYは預金など自宅以外の遺産を相続するという形で分割をすればよいのですが、遺産がほぼ自宅のみである場合には、Aさんが自宅を相続するにはZとYに遺産の8分の1ずつに当たる額を金銭などで支払うなどして調整する必要が出てきます。
この調整金が準備できないと、自宅を売却して売却代金を分割したり、自宅をAさんとZ、Yらの共有とする形などで分割したりすることになってしまい、Aさんが自宅を単独で相続することができなくなってしまう恐れもあります。
(2) BとZ、Yらが疎遠だった場合
BさんとZ、Yが長い間付き合いがなく疎遠だった場合には、Bさんの妻であるAさんも同じようにZ、Yと疎遠なのが普通でしょう。特に、BさんとZやYとが折り合いが悪かった場合には、スムーズに遺産分割の話し合いが進まないかもしれませんし、夫に先立たれたAさんに協力的な形での解決ができないかもしれません。
Bさんが亡くなると、Bさん名義の銀行預金は凍結され出金できなくなりますが、それまでBさん名義の預金から生活費を出していたような場合にはAさんの生活に差し支えが出ることもあるでしょう。遺産分割が完全に終了していなくても、法定相続人全員の同意があれば銀行は出金や預金の解約に応じてくれますが、法定相続人間の関係がよくないと、簡単にはこの同意も得られません。
このように、ZやYとの関係によっては遺産分割の話し合いがこじれてしまう可能性もあります。
■3 生前に取るべき対策
AさんとBさんに子どもがいる場合には、Bさんの兄弟姉妹は相続人になりませんから、上のようなトラブルは起こらないのですが、子どもがおらず、両親も他界しているこのような場合には、兄弟姉妹も相続人となるために、トラブルの原因となることがあります。
では、子どものいないAさんとBさんが生前に取るべき対策としてはどのようなことが考えられるでしょうか。
最もいい対策は、BさんがAさんに全財産を相続させるとの遺言を残しておくことです。
子どもがいる場合には、このような遺言を残しても、子どもには遺留分(最低限相続できる割合)がありますからAさんが全財産を相続できないこともあります。しかし、兄弟姉妹には遺留分は認められていませんので、ZやYは最低限相続できる割合があるとの主張をすることはできず、Aさんはこの遺言によってBさんの全財産を相続することができます。
そして、この遺言はなるべく公正証書遺言で作っておくのが安心です。自筆の遺言も法律の定める形を取っていれば有効ですが、偽造したものではないかとか無理やり書かせたものではないかなどの疑いを持たれて争いの原因となることがあります。公正証書遺言であれば、このような疑いを持たれて争われることはほとんどありませんから、安心できるわけです。
そして、遺言を残そうとする場合には、予め専門家である弁護士に相談しておくことをお勧めします。法定相続人、それぞれの相続分などについても明確になりますし、どのような遺言内容にするのがいいかについてもアドバイスを受けることができます。
■4 相続発生後に取るべき対策
Bさんが遺言を残さずに亡くなった場合、ZやYとの関係を調整する必要があります。遺産分割をする際に行う遺産分割協議の前に、弁護士に相談をするようにします。そして、トラブルをできるだけ回避して遺産分割を行うことができないか検討することになります。
もし、ZやYとトラブルになったら、遺産分割調停や審判、場合によっては裁判によって決着をつけていくことになります。
ただし、相続には、様々な「期限」が存在します。特に、相続税の納付は相続発生後10カ月以内となっており、これが意外と短いので注意が必要です。ですから、このようなトラブルになりやすいケースは特に、早めに弁護士に依頼して相談しておくことが望ましいでしょう。
■まとめ
子供や両親がいない場合の相続についてみてきました。誰が法定相続人になり、相続分がいくらかについても確認しました。
そして、このケースはとてもトラブルになりやすい事例であり、生前対策としては公正証書遺言を用意しておくこと、また相続発生後は早期に弁護士に相談することを述べました。
いずれにせよ、相続はいつか必ず発生する大きな問題です。事前の準備を行うことがとても大切になります。
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