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筆界の「境界確定」をめぐる土地の相続トラブル(入門編)

筆界・所有権界・境界確定訴訟のイメージ

■土地をめぐる相続トラブル事例~土地の境界問題~

土地を相続する場合、その土地について境界トラブルが起こるケースがあります。相続人間で土地の境界についての意見が合わないこともありますし、隣人との間で土地の境界トラブルが発生していることもあります。

この場合、相続税の納税がしにくくなるなどの問題があるので、放置しておくことはできません。相続した土地の境界トラブルを解決するためには、どのような手段をとることができるのでしょうか?

今回は、相続した土地の境界トラブルのケースと問題の解決方法について解説します。

 

■1.土地の境界トラブルとは

土地を所有している場合、境界トラブルが起こることが多いです。土地の境界トラブルとは、隣地との境界について、利害関係人に争いが発生することです。

相続した土地の場合には、相続人間で境界トラブルが起こることもありますし、隣人との間で境界トラブルが起こることもあります。

なお、ここで境界という場合、「筆界」「所有権界」の2つの意味があります。

筆界とは、土地の登記が行われたときに、土地の範囲を定める区画とされた公的な境界線のことです。筆界を所有者らの合意で変更することはできません。これに対して所有権界公的なものではなく、隣接する土地の所有者らが合意によって変更することなどができます

所有権界を定めても、公的な土地の境界には影響がないので、土地の売却などの際には筆界が基準になります

また、境界トラブルが起こる場合、通常は筆界についての認識の違いから発生します。

 

■2.境界トラブルがある場合の問題点

土地の境界について相続人間や隣人などと争いがあると、どのような問題があるのでしょうか?

この場合、相続税の納付の場面で問題になります。相続税が多額になる場合には、物納延納などの方法を利用することができます。

物納とは、相続税の現金での支払が難しい場合に、土地などの物をそのまま納付する方法です。

延納とは、相続税の一括払いが難しい場合に、支払い日を延長して分割払いで相続税を支払う手続きのことです。
相続した土地がある場合、これらの相続税支払い方法を利用することができることが普通です。

しかし、相続した土地に境界トラブルがあると、相続税を納付する際に物納することができませんし、延納も認められにくくなります

結局、これらの支払方法が利用できず相続税を現金で一括払いしなければならないのです。

そうなると、相続税が多額になるケースなどでは、お金が用意できず相続税を支払えなくなってしまいます。相続税を納付出来ないと、相続人の他の財産などが税務署から差し押さえられてしまうおそれもあります。

しかも、土地の境界に争いがあると、通常その土地を売却することもできません。

そうなると、土地を売却した代金をもって相続税を支払うこともできなくなります。

 

このように、相続した土地に境界トラブルが発生すると、さまざまな問題が発生します。

 

■3.境界トラブルの具体的なケース

3-1.相続人間の境界トラブル

相続した土地に境界トラブルが起こる事例としては、相続人間でトラブルが起こることがあります。以下で具体例を見てみましょう。

 

AさんとBさんは兄弟であり、父親が亡くなったので、ある土地を共同で相続しました。

その土地は隣地との間にブロック塀があり、Aさん(長男)はそのブロック塀による土地の境界線に納得していましたが、Bさん(弟)はこれに納得できないと言い出して、土地の境界はもっと外側にあると主張しました。

もちろん隣人はもともとのブロック塀のとおりの境界だという認識だったので、Bさんがこれと違うことを言い出したことにより、土地の境界が確定できなくなってしまいました。

Aさんは、土地の境界確定をするために、境界確定測量をしようとしましたが、Bさんは立ち会ってもくれず、境界確認することができませんでした。

土地の境界が確定できないので、売却することもできません。現在でも土地は境界が確定されないまま、何の活用もできずに放置されています。

 

3-2.隣人との境界トラブル

相続した土地について、隣人とトラブルになることもあります。

もともと境界トラブルがあった土地について、その問題を解決しないまま相続が起こってしまったケースです。

具体例を見てみましょう。

 

CさんとDさんは親から土地を相続しましたが、その土地については隣人と境界についての争いがありました。

境界が確定できないため、土地を売却することはできませんし、相続税の物納もできなかったのでCさんたちは多額の相続税を現金で用意しなければなりませんでした。

また、土地の境界を確定するため、結局は弁護士に依頼して境界確定訴訟をしなければならず、多大な手間と費用がかかりました。

最終的には裁判で土地の境界が確定されましたが、問題解決までに土地測量費用や弁護士費用など、合計すると100万円以上もの費用がかかり、時間も1年半以上かかってしまいました。

 

■4.境界トラブルを解決する必要性

以上のように、土地の境界にトラブルがあると、さまざまな問題が発生します。相続する土地がある場合には、相続が起こる前に境界トラブルを解決しておくべきです。

境界トラブルを解決するには、利害関係者が関与して境界を確定する必要があります。

以下でその具体的な方法を説明します。

 

4-1.関係者が立ち会って境界確認をする

土地の境界を確定するためには、まずは土地の測量を行って、境界を確定する必要があります。この土地測量のことを境界確定測量と言います。

境界確定測量は、土地家屋調査士(測量士)に依頼します。

そして確定された土地の境界について、隣地所有者が立ち会って境界確認を行います。

全員の立ち会いのもとに境界が確認できたら、境界確認書を作成します。

ただし、境界確認ができるためには、隣地の所有者などとの間で合意ができることが前提です。そもそも土地家屋調査士に依頼しても、他の利害関係人が立ち会いもせず、境界確認もしてくれない場合には、いくら一方が境界確認の手続きをしようとしてもうまくいきません。

境界についての争いが激しい場合には、自分たちだけで土地の境界確認をすることは難しくなります。

 

4-2.筆界特定制度を利用する

土地の境界を確定するための手続きとして、筆界特定制度があります。筆界特定制度とは、土地所有者などからの申請にもとづいて、法務局や地方法務局の筆界特定登記官が土地の筆界(境界)を特定してくれる手続きのことです。この場合、筆界特定登記官は土地の専門家である筆界調査委員の意見も聞いて、公正中立に土地の筆界を特定します。

筆界特定制度を利用すると、利害関係人にそのことが通知されます。そして、土地に関する資料が集められ、測量調査などが行われます。

そして、利害関係人から土地の筆界についての意見が聞かれて、最終的に土地の筆界が特定されます。

筆界特定制度にもとづいた土地の筆界に不服がある場合、当事者は裁判所に対して境界確定訴訟を起こすことが可能です。

 

4-3.境界確定訴訟を利用する

相続人間や隣人と土地の境界を確定できない場合や筆界特定制度を利用しても境界トラブルを解決できない場合には、裁判所に境界確定訴訟を起こして境界を確定してもらうことができます。

境界特定訴訟では、土地の測量を行い、土地に関する公図地積測量図などを集めて双方が主張と立証をして、最終的に裁判所に土地の境界を確定してもらいます。

境界確定訴訟をしても、必ずしも自分の言っているとおりの境界が認定されるとは限りません。

また、境界確定訴訟は大変な手間がかかります。

現地測量の必要もありますし、法務局でいろいろな書類を取り寄せたりする必要もあります。時間もとても長くかかり、1年以上かかるケースもあります。

相続した土地に境界トラブルがあると、相続人には大変な負担になるので、相続が起こる前に境界トラブルを解決しておいた方が良いです。

境界トラブルの解決には手間がかかる上に専門的な知識も必要になるので、弁護士に依頼した方が良いでしょう。

弁護士に依頼すると、隣人や相続人間での境界確認の手続きもスムーズにすすみやすいですし、筆界特定制度や境界確定訴訟を起こす場合にも心強いです

 

■まとめ:土地の相続

今回は、相続した土地に境界トラブルがある場合の問題点を解説しました。土地を相続した場合、相続人間で土地の境界について争いが発生したり、隣人との間で境界について争いになったりすることがあります。
境界トラブルがあると、土地を売却したり、相続税の物納や延納なども利用しにくくなったりします。

土地の境界トラブルを解決するには、境界確認手続きを行う必要がありますが、確認が出来ない場合には筆界特定制度を利用したり、境界確定訴訟を利用したりする必要があります

境界トラブルの解決には手間も時間もかかりストレスも大きなものとなるので、弁護士に依頼した方が確実です。

 

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