目次
これからの時代、「養子」縁組をすることは、遺産相続の上でよく遭遇する場面が増えるかもしれません。それに伴い、弁護士に相続についてご相談いただくケースも増える可能性があります。
そこで今回は、養子と相続について、まとめてみたいと思います。
■養子と相続について
例えば母親が既に他界している状態で父親が死亡し相続が発生した場合、法定相続人となるのは父親の「子供」です。子供とは何か、をわざわざ論じるまでもありませんが、では「養子」の場合は相続人になることはできるのでしょうか。
養子には、医学的な血縁関係はありませんが、法律上は正式に血族として扱われますので、実の子供と同じように相続権があることになります。そのため、養子だからといって実子よりも取り分が減るということはありません。例えば、実子一人、養子一人であれば、法定相続分は1/2ずつという事になります。
○養子縁組には2つの種類がある
養子になるためには、養親と「養子縁組」をする必要がありますが、この際の養子縁組には、「普通養子」と「特別養子」の2種類があります。
【普通養子縁組】
養子に行った場合でも実の父母に対する相続権は失いません。つまり、養親に対する相続権と、実父母に対する相続権の両方が共存することになります。 いわゆる相続の二重取りができるのです。なお、仮に養子が死亡した場合に、養子に実子がいなければ、第二順位として父母が法定相続人に浮上してきますが、この際の父母とは、実父母と養父母の両方が該当することになります。
このように、実父母との関係が切れることがないため、普通養子縁組は相続税対策などでも頻繁に用いられています。
平成27年1月に相続税についての改正がありました。それにより、相続税対策が注目されています。養子縁組を行うことで、相続税対策をする方も今後更に増えていくかもしれません。
【特別養子縁組】
養子を自分の子供と全く同じように育てたい場合に行なう養子縁組です。特別養子によって縁組みをすると、養子は「養親の嫡出子」となります。要するに、養親から生まれた実子として扱われます。ですから、普通養子と違い、実父母との親子関係、親族関係は完全に終了します。
よって、実父母とその血族に対する相続権も特別養子となった時点で完全に消滅することになります。
このように、特別養子は実の親との血縁関係がなくなってしまうため、養子縁組をする際には次のような条件があります。
- 養親は婚姻している夫婦に限られ、夫婦ともに養親となること。
- 養親となる人は、原則として25歳以上であり他方が20歳以上であること。
- 養子は、原則として6歳未満であること(一部例外あり)
- 実父母の同意
- 実父母が子どもを適切に育てられない場合で、子どもの利益のため特に必要があると認めるとき
これらの要件がすべて揃ったうえで、家庭裁判所の審判を経て特別養子が認められます。
○実子と養子が揉めるケース
このように実子と養子には法律上同じ相続分が認められているため、それが原因で遺産分割協議が紛争化する場合があります。
例えば、実の息子である兄と、その妹の旦那である婿養子がいるとします。この状態で両親が共に死亡して相続が発生すると、相続権があるのは、兄、妹、妹の旦那である婿養子の3名となり、それぞれが1/3ずつの相続分をもつことになります。
これに納得できない兄が、遺産分割協議において難色を示す可能性があります。
ほかにも、早くに旦那を亡くし、長年義母の介護などを献身的に尽くしてきたお嫁さんと養子縁組をしていたような場合、将来義母が死亡した際の相続において、義母の実の子供と養子(お嫁さん)との間で争いが発生します。いずれにしても、実子側がより多くの取り分を主張することが多いため、遺産分割協議が難航する可能性があります。こういったケースで、弁護士にご相談されるケースもあるわけです。
○養子縁組で相続税が節税できるって本当?
相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」によって算出されます。つまり、法定相続人の人数が多ければ多い程、相続税の基礎控除額が増えて相続税が節税できるという仕組みになっています。
これを利用して、養子縁組をすることで、基礎控除額を増やし節税することができますが、これには一定の制限があります。
実子がいる場合は養子一人まで、実子がいない場合は養子二人までがこの法定相続人に含めて計算することができます。ですから、仮に養子が三人いたとしても、カウントできるのは実子がいる場合で一人、いない場合で二人までとなります。
ただこれはあくまで相続税の基礎控除額の計算上の問題ですから、相続権がなくなるというわけではありませんのでご安心ください。
○孫と養子縁組するとどうなる?
孫との養子縁組は、相続税対策上もよく用いられます。そもそもわざわざ孫と養子縁組をしなくても、最終的には実親からその財産を相続することになるのだから同じことでは、と思うかもしれませんが、相続税は相続が発生する度に発生します。ですから、養子縁組をすることで一代飛ばして財産を移転することができるため、一回分の相続税が節税できることになるのです。よく考えられた相続税対策と言えます。
そしてもう一つ、孫との養子縁組で覚えておいてほしいことがあります。それは、「二重資格の相続人」です。
これは、例えば父母を早くに亡くした子供を祖父母が育てるような場合に養子縁組をすると、将来祖父が死亡した際の遺産相続において、孫は以下の2つの法定相続人としての資格を手にします。
- 祖父の養子としての地位に基づく法定相続人
- 父の代襲相続人としての地位に基づく法定相続人
このように2つの法定相続人としての地位を有することになります。このような場合は、それぞれの地位に基づく法定相続分を両方手にすることができるという事になります。要するに二重資格の双方を有効に行使できるということです。
但し、普通養子ではなく特別養子だったような場合は、祖父母と養子縁組をした段階で、実親である亡き父との血縁関係は絶たれるため、父の代襲相続人にはなれません。よって特別養子縁組の場合は、二重資格とはなりません。
このように遺産相続に養子が絡むと、遺産分割協議などが非常に複雑化、紛争化する傾向にあります。また、普通養子か特別養子かによってその扱いが大きく変わってくるため、トラブルを防止するためにも、できる限り早めに相続に強い弁護士に相談しましょう。
○遺産相続に強い埼玉の弁護士事務所:エクレシア法律事務所にお任せください
当事務所は遺産相続・遺産分割に関する実績が多数ある法律事務所で、相続に強い弁護士が在籍しております。
埼玉県越谷市をはじめ、越谷市周辺の春日部市や川口市、草加市、八潮市、吉川市、三郷市、さいたま市、蕨市、更に東京都足立区や千葉県流山市など、周辺エリアの方からもご相談をお受けしています。
お電話かメールにて、ご予約をいただいた上でご相談とさせていただきます。無料相談もございますので、相続トラブルにお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
◆越谷市内の方へ (新越谷/南越谷駅周辺の地図など) |
◆春日部・草加・川口など周辺エリアの方へ (越谷市外からのアクセス) |