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■相続発生!その後取るべき手続きとは?基準は何?
大切な家族が亡くなり、悲しみがまだ癒えないうちから遺産相続は始まります。また、相続するような財産がないという場合についても、一定の手続きはしなければなりません。そこで今回は、遺産相続発生後にやらなければならない各種手続きの概要について解説したいと思います。
〇1:死亡届
人がお亡くなりになられると、通常は通夜、告別式、火葬、埋葬というのが一般的な流れですが、これらは役所の許可を受けなければできません。つまり、役所の許可なく勝手にご遺体を火葬したり埋葬したりすることはできないのです。
ステップ1:医師から死亡診断書を受け取る。
死亡診断書は医師に発行してもらいますが、病院によって所定の手数料がかかります。概ね3,000円から5,000円程度を見ておきましょう。なお、死亡診断書のほかに死後処置料という費用もかかります。これは、ご遺体をきれいに拭いたり着替えさせたりするための費用で、概ね5,000円程度でしょう。
なお、自然死や死因が明確な場合以外の交通事故や自殺、突然死などについては警察が死体検案を行ないますので、少し時間がかかります。この場合は、「死体検案書」が代わりに発行されます。
ステップ2:死亡届と死亡診断書を役所に提出する。
医師から死亡診断書を受け取ったら、死亡届を記入し最寄りの役場に提出します。なお、死亡届の提出は「死亡を知った日から7日以内」となっていますが、お葬式の段取りを考えると死亡後直ちに行なうべきでしょう。
ステップ3:火葬許可証を受け取る。
死亡届を提出する際に、同時に「死体火葬許可交付申請書」も記入し提出すると、引き換えに火葬許可証が発行されます。これでようやくご遺体を火葬することができます。
まずこれが死後直後にやらなければならない基本的な流れです。なお、葬儀屋にこれらの手続きを代行してもらうことも可能です。
〇2:年金受給停止と未払い分の請求
意外と忘れる人が多いのが死亡後の年金の手続きです。現状のところ、死亡届を役所に提出しただけでは、自動的に年金受給停止手続きにリンクしていないようです。そのため、家族が死亡された場合は、別途年金受給停止の手続きをとらなければなりません。
手続きの窓口は、社会保険事務所または、市区町村役場の国民年金課となります。年金受給停止手続きは死亡後10日以内が期限となっています。
なお、一定の条件を満たす場合は遺族年金が支給されますので、詳しくは窓口で確認してみましょう。
〇3:相続財産調査
お葬式が終わって一息つきたいところですが、残念ながらゆっくりとはしていられません。「遺産分割協議」を始めなければならないため、それにあたって事前に2つの調査が必要となります。そのうちの一つが「相続財産調査」です。
遺産分割協議をするにあたり、被相続人の財産が全部でいくらあるのかを明確にする必要があります。
【主な相続財産調査の方法】
- 自宅にある被相続人名義の通帳などを確認する。
- 金融機関から届いている書面などから辿ってみる。
- カード会社の請求書や引き落とし履歴から取引先を探る。
- 権利証など現金以外の財産についても調べる。
- 被相続人が財産目録を残しているか確認する。
実務上、この財産調査が最も骨の折れる作業になることがあります。
本人がこの世にいない状況ですべての財産を漏れなく見つけることは非常に大変です。万が一漏れていてあとから発覚すると、遺産分割協議や相続税申告をすべてやりなおす事になってしまい、大変な労力を費やすことになってしまいます。そのため、財産の状況については生前に「財産目録」として書面に書いて「遺言書」などと一緒に保管しておくことをおすすめします。
また、財産調査の際には、プラスの財産だけでなく借金などのマイナス部分についてもしっかりと調査し把握しましょう。
【銀行口座の凍結】
ご家族が死亡した場合は、本人名義の銀行口座を凍結しなければなりません。遺産分割協議が確定する前に勝手に銀行からお金を下ろして浪費をすると、あとから相続放棄ができなくなったり、他の相続人と揉めたりする原因となるため、銀行側も遺産分割協議が確定するまでは、相続人一人からの請求では預金の引き出しを拒否するようになります。
ただ、銀行口座の凍結は、役所に死亡届を出しただけではリンクしていないため、別途それぞれの銀行に出向いて個別に手続きをしなければなりません。
なお、遺産相続の手続きを弁護士や行政書士に依頼すれば、これらの手続きを代行してくれる場合もあります。
〇4:相続人の調査
遺産分割協議の前にしなければならない事前調査の2つ目が「法定相続人の調査」です。家族なんだから、わざわざ調査するまでもないだろう、と思うかもしれませんが、それでは役所や金融機関は納得しません。
まずは被相続人の死亡から出生まで遡って「戸籍謄本」、「除籍謄本」などをすべて取得します。途中で役所を移動している場合は、どんどん出生まで遡って追跡して取得しなければなりません。
なぜこのようなことをするのかと言うと、例えば生前に家族には内緒で他人の子供を認知していたり(いわゆる隠し子がいる)、生き別れた兄弟が実は生きていたりなど、戸籍は普段あまり見る物ではないので、改めて取得すると意外な事実が発覚することが多々あるのです。
また、相続人が兄弟姉妹の場合、すでに疎遠になっていたり、海外に移住していたりするとそれらの人たちとも必ず連絡をとらなければならないため、相続人を捜索するだけで数ヶ月、数年とかかってしまうケースも実際にあります。
そのため、相続が発生しそうな状況であれば、事前に法定相続人がどこに住んでいるのかくらいは把握しておくようにしましょう。
なお、戸籍の取得については非常に骨の折れる作業ですが、これらについても弁護士や行政書士であれば「職務上請求」という特権を使って代行して取得してもらうことが可能です。
〇5:遺言書の捜索および検認
相続財産の調査および相続人の調査と平行して、「遺言書」についても捜索しましょう。自宅のタンスや金庫の中はもちろんのこと、銀行の貸金庫、さらには生前に取引をしていた弁護士や行政書士がいるようであれば、それらの専門家が代理で保管している場合もありますので連絡してみましょう。
また、公正証書遺言を作成している場合は、公証役場に連絡をすれば、遺言書の有無を確認することも可能です。
なお、公正証書遺言以外の遺言書が見つかった場合は、【絶対に開封せず】に、家庭裁判所に連絡をして「検認」の申請をしましょう。実は遺言書は、公証役場で作成した公正証書遺言以外については、遺言書が本当に本人の書いたものであるのか家庭裁判所で確認してからでないと、その執行ができません。
検認手続きは、申請後すべての相続人に対して家庭裁判所から遺言書の検認手続きの日時が通知され、その日に家庭裁判所において開封され検認がされます。
なお遺言書の検認には手数料はかかりませんが、遺言書1通につき収入印紙800円が必要となります。また、各相続人に対して通知する際の郵便切手代なども予納する必要があります。
検認手続きは、申請してから実際に検認されるまでに1ヶ月以上かかる可能性が高いため、遺言書を発見した場合はできる限り早く申請しましょう。
〇6:相続放棄
相続放棄をする場合は、この段階で手続きに着手する必要があります。相続放棄は相続開始後3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に対して所定の書類を提出することで行ないます。
財産調査の結果、相続する価値がなかったり、あまりにも借金が多かったりする場合は、この期限までに相続放棄の手続きをしないと「借金を相続する」ことになるため大変危険です。
なお、他の相続人に口頭で「おれは相続しないから」と伝えたり、書面を交わしたりしてもそれは相続放棄にはなりません。借金を相続したくないのであれば、家庭裁判所で相続放棄の正式な手続きをとる以外に方法はないと覚えておきましょう。
〇7:遺産分割協議と相続税の申告
すべての情報が出そろったところで、遺産分割協議が始まります。
なお、ここまでご説明してきたすべての手続きについては、あるゴールを基準としてすべてを逆算してスケジューリングをする必要があります。その基準となるゴールとは「相続税申告」です。実は、遺産分割協議には法的な期限はないため、1ヶ月でも10年でも法的には問題ありません。事実、遺産分割協議がもつれ、「訴訟」になると、解決までに数年以上かかることも少なくありません。
ただ、ここで問題になるのが「相続税申告」です。相続税申告は相続開始後「10ヶ月以内」に申告と納税を済ませなければならず、これは遺産分割協議が終わっていようがいまいが関係なくやらなければなりません。
ではなぜ相続税申告の「10ヶ月以内」を基準にして、すべての手続きのスケジュールを調整しなければならないのかというと、相続税申告期限までに遺産分割協議が終わっていないと、相続税の各種控除制度を適用させることができないため、非常に高額な相続税を納税しなければならなくなるからです。
(※後日遺産分割協議が確定したら、修正申告をすることで還付を受けることは可能です)
これをご存知ない方が非常に多いため、申告期限ギリギリになって弁護士や税理士、行政書士などに駆け込んでくる人がたくさんいます。ただ、遺産分割協議も相続税申告も、1ヶ月やそこらで完結する程簡単な手続きではありません。
「相続開始後10ヶ月も余裕がある」と思うかもしれませんが、実際はこの10ヶ月という期間はかなりぎりぎりです。そのため、遺産相続が開始して、相続財産が複数あり、また相続人も複数おられるような場合は、相続税申告が間に合わなくなる可能性があるため、できる限り早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
【準確定申告をお忘れなく】
実は相続によって税務署に行なう手続きは、相続税申告だけではありません。被相続人が亡くなった年の亡くなるまでの分の「確定申告」をしなければならないのです。これを「準確定申告」といい、相続人が全員で申告しなければなりません。
期限は相続開始後4ヶ月以内です。通常、相続税申告を税理士に依頼していれば、準確定申告についても同時に対応してくれるでしょうが、自分で対応する場合は、できる限り早めに済ませるようにしましょう。
〇8:各種名義変更
遺産分割協議が終わると、基本的には相続の手続きはほぼ終わりです。ただ、以下のような財産については、その財産の名義を被相続人から相続人名義に変更する必要があります。
※なお、名義変更が必要な場合は「検認済みの遺言書」または「遺産分割協議書」のいずれかが必ず必要となります。遺産分割協議書は弁護士や行政書士に依頼して作成してもらいましょう。
①銀行口座
銀行口座の名義を変更するためには、以下のような書類を銀行に提出します。
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
なお、遺言書がある場合は、以下のようになります。
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言の場合は不要)
- 預金口座を相続する人の印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
②不動産
相続による不動産の名義変更を「相続登記」といい、自分でもできますが基本は弁護士や司法書士が代行する場合が多いでしょう。この際も遺産分割協議書や遺言書など所定の書類が必要となります。期限はありませんが、手続きをせずに放置していると、重ねて相続が発生したときに非常にややこしい事態が発生しますので、相続登記は遺産分割協議が終わったらすぐに手続きしましょう。
③その他ゴルフ会員権など
その他にも被相続人の名義になっているものについては、すべて変更の手続きをしましょう。
【ワンポイントアドバイス:不要な財産は生前に処分を】
被相続人がゴルフ好きで「ゴルフ会員権」を持っているケースがあります。これも相続財産の対象ですので、遺産分割協議で相続する人を決めるのですが、よくあるパターンとして、相続人の中にゴルフをやる人がおらず、だれもゴルフ会員権が欲しくないというケースがあります。
だからと言ってそれだけで相続放棄をするわけにもいかないため、とりあえず相続して解約すればいいやと思っているかもしれませんが、相続財産は原則として、相続人の名義に一旦変更してからでないと売却することができません。そのため、相続人にとってゴルフ会員権は不要だったとしても、一旦名義変更をしてからでないと売却したり解約したりできません。
ここで問題になってくるのが、ゴルフ会員権の名義変更手数料です。
実はこれ、かなり高額なのです。
名義を換えるだけに数十万円以上かかることもありますので、できれば相続人に必要がなさそうな財産については、こうした無駄な手間を省くために、生前に売却したり解約したりしておくことをおすすめします。
■困る前に無料相談!弁護士に遺言書/相続は任せましょう
ということで、被相続人の死後、悲しみの中で行うべき手続きをまとめてみましたが、とてもではないですが、全て一般の方が行うというのは無理があります。判断に困ることもあるでしょう。ですから、遺言書を準備する段階から弁護士に入ってもらい、「遺言執行者」として遺産分割協議でも手腕をふるってもらう方が断然楽です。また、トラブルが発生した場合にも助言をもらうこともできるでしょう。
弁護士の場合、法廷闘争・調停といったこともできますので、相談者にとって益となる手段が増えます。まずは弁護士にご相談ください。
当事務所は埼玉県越谷市にありますが、周辺の草加市、春日部市、川口市をはじめ、八潮市、吉川市、三郷市、そして東京都足立区などからもご相談を受け付けております。無料相談も受け付けておりますので、ご安心ください。越谷市周辺の方は、まずお電話やメールにて、お問合せください。
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